SNSに勝手に顔写真を公開された場合のプライバシーの侵害問題と解決

SNSは、今や数多くの人々が利用しているコンテンツであり、情報収集の手段や人とのつながりを作るために重要な存在です。そのようなSNSでは写真などの画像を掲載することもでき、自分の写真を自分で掲載する分には問題ありませんが、他人に勝手に顔写真を公開されてしまって不快な気分を味わうという問題も起きています。この問題は、フォトハラスメント(無断で他者をスマホで撮影する行為や撮影した写真を相手の許可を得ずにSNSに投稿し、相手に精神的な苦痛を与えること。)などとも呼ばれ、単なる不快な気分になるという問題ではとどまらないこともあります。SNSで勝手に他人の顔写真を公開することの問題性とその対処方法について知ることが重要です。

人格権を守る

人には平穏な生活を送るための人格権というものが存在しています。憲法13条によると人格権は「生命や身体、自由や名誉など個人が生活を営む上で、他人から保護されなければならない権利」となっており、この人格権の中にはプライバシー権と肖像権というものがあります。プライバシー権とは、私事をみだりに他人に公開されない権利のことで、肖像権とは自分の顔や姿を勝手に他人に撮影・描写・公表されない権利のことです。これらの権利から、SNSをはじめネット上に氏名や住所といった個人情報のほか人物を特定できる写真を掲載、あるいは転載することは、プライバシーの侵害、および肖像権の侵害となり、違法です。

SNSに勝手に写真を公開される危険性

SNSに勝手に顔写真を公開されたり、個人情報を公開されたりすることは、不快な気分になるものです。しかし、不快な気分になるだけではとどまらない被害を及ぼすこともあります。写真ひとつで個人情報を特定されてしまう可能性が高いです。人物の写真の背景に写る建物や風景から、所属する学校や勤務先を突き止められる可能性もあります。ネットストーカーにつけ狙われて精神的な苦痛をこうむることもあれば、実際のストーカーに居場所を突き止められる可能性もあります。このほか、生活状況を把握され、誘拐や強盗などへとつながりかねません。

対処方法

SNSによってプライバシーの侵害の侵害を受けた場合、泣き寝入りしなければならないというわけではありません。ネット上でトラブルが発生した場合には、それを解決するためのプロバイダ責任制限法というものがあります。プライバシー権や肖像権が侵害された場合には、この制限法に則って送信防止措置依頼と発信者情報開示請求を行い、時に損害賠償請求を行い慰謝料を請求するという対処をすることが可能です。送信防止措置依頼とは、ネットに掲載された情報を削除する依頼のことです。公開された写真をそのままにすると被害が拡大する可能性があるので、写真を削除してもらいます。

発信者情報開示請求とは、匿名で書き込みを行なわれた場合に、その発信者の特定を求める手続きのことをいいます。肖像権の侵害、プライバシーの侵害から身を守る様々な対処方は、自分ひとりで行うことは難しいです。制限法はあっても、応じてくれないこともあるので、裁判所の手続きが必要となる可能性もあります。一人で行うには手間と時間がかかるので、ネットトラブルに詳しい弁護士に相談することが望ましいです。

プライバシー侵害の基準

写真が勝手に掲載されていたとしても、すべての写真がプライバシーの侵害になるわけではありません。侵害となるかどうかの基準があるので、それを知っておくと便利です。基本的に、どれだけ特定されるものかということが基準になるので、撮影された対象がはっきり写っているのか、メインの被写体か、公開場所が拡散可能性が高いのかといったことに着目されます。もし公開された写真が、ぼんやりとした写真、風景がメインの写真、少人数で共有しただけとなった場合には、プライバシーの侵害とならない可能性もあります。

慰謝料の相場

プライバシーの侵害は違法行為であり、慰謝料を請求することができますが、どれだけの慰謝料を請求することができるのかといったことが問題となるので、相場を知っておくことが重要です。肖像権の侵害(純粋な名誉のみ)による慰謝料の相場は、およそ10から20万円とされています。しかし、性的な写真や動画といった特殊なものに関しては100万円以上請求できる可能性もあり、悪質なケースでは500万円以上となる可能性もあります。